“独自コロナ政策”で注目の福岡市長に直撃「なぜ日本は変化に対応できないのか」
コロナ禍でさまざまな活動が“自粛”を余儀なくされ、国民の閉塞感はピークに達している。ワクチン接種は遅れ、他の先進国が経済を盛り返す中でGDPは2四半期連続でマイナス成長の見込み。
出口が全く見えない中、スタートアップ支援、先端技術の活用など、先進的な取組みで、福岡市を「日本で最も元気な都市」と言われるまで成長させてきた高島宗一郎・福岡市長が新刊『福岡市長高島宗一郎の日本を最速で変える方法』(日経BP)を上梓し、「コロナ禍は日本が変化し、飛躍する大きなチャンス」と訴え、話題を呼んでいる。
2010年から福岡市長を務める高島氏は国家戦略特区を活用し、福岡市を開業率日本一に導き、税収も7年連続で過去最高を達成。コロナ禍においても国に先駆けて「店舗への家賃支援」を実行し、ワクチン接種でも独自の優先枠を導入するなど、迅速な対応が注目されている。しかし、なぜ今が改革のチャンスなのか? リモートインタビューで本人を直撃した。
あらゆる分野の停滞はすべて同じ原因
――なぜこのタイミングで新刊『日本を最速で変える方法』を執筆したのでしょうか。
高島宗一郎(以下高島):コロナ禍の前から、福岡市ではスタートアップを積極的に支援してきました。いつの時代も新しいテクノロジー、サービス、ビジネスモデルを生み出すのはスタートアップ企業です。それを支援することが福岡、ひいては日本の発展に繋がると信じて、スタートアップの大きな壁となる規制の緩和にも全力で取り組んできました。
しかし、その中で「日本は本当に変わりにくい仕組みの国だな」と強く感じていました。おそらく、皆さんもコロナ禍の1年で「なぜ定額給付金が手元に届くまでこんなに時間がかかったのか?」「休業補償はなぜ一律の金額なのか? 売り上げに応じた補償でなければ不公平ではないか?」「なぜロックダウンを行わず、自粛要請しかできないのか?」と数々の疑問が生まれたと思います。
私も全く同じ思いでした。その時、前々から感じていた日本の対応の遅さと、コロナ禍でのあらゆる分野の停滞は、実はすべて同じ原因に行き着くのではないかと気づいたのです。
いつの間にか変化に全く対応できない国に
高島:それは戦後の日本を覆ってきた「戦争に繋がりかねないものは徹底的に排除する」という価値観です。有事の想定を忌避する思想と、それに基づく制度により、あらゆる危機に対して国民全体が無思考になり、いつの間にか変化に全く対応できない国になっていたということです。
このままでは他国が新しいことをどんどん取り入れる中、日本は間違いなく後進国に転落してしまいます。総理大臣1人が決断すればいい、政治家が動けばいいと、誰かの責任にしていても何とかなる時代はすでに終わりを告げました。もはや、対症療法ではどうにもならないところまで来ているのです。根本治療に乗り出すべく、国民全体が大きく意識を変えていかなければならないという危機感から本書を執筆しました。